日本財団 図書館


 

3.2移動体衛星通信に関する研究

3.2.1運輸多目的衛星(MTSAT)システムの概要

(1)はじめに
世界的な航空需要の伸びに対応するため、国際民間航空機構(ICAO)では、新技術を活用した新しい航空保安システムの検討が1983年頃から本格的に始められ、1991年の第10回航空会議において人工衛星やデータリンク等の技術を活用し、グローバルな航空保安サービスの提供を可能とする将来の航空航法システム(FANS=Future Air Navigati? Syst?)構想が承認された。
この構想は、従来の地上に設置された航空航法システムから、衛星を利用した航法システムヘの移行が大きな特徴であり、衛星システムがその中核となっていると言っても過言ではない。
アジア・太平洋地域は、著しい経済成長に伴い同地域の将来の航空輸送量は世界的に見てもかなりの割合を示すことが予想されている。したがって、我が国としても将来の航空需要に対応するためには、北太平洋地域等の洋上航空路の処理能力を拡大する必要がある。
そのような背景の中で、航空局では将来の航空航法システムの中核となる運輸多目的衛星を、気象観測衛星との複合衛星として1999年夏に打ち上げることを決定した。
(2)航空保安システムの現状と課題
現在の航空保安システムを、通信(Communication)、航法(Navigation)及び監視(Surveillance)に分類し、その現状と課題について洋上を中心に整理すると次のとおりである。
1)通信(C)
現在、洋上を飛行する航空機と地上の管制機関との通信手段は、短波による音声通信が利用されているが、電離層の状態により周波数を切り替えて使用しているため、常時使用できる周波数(チャンネル)が少なく、音声通信のため通信効率が悪いことや、電波伝搬状態により通信品質が劣化しやすいこと等の問題がある。
2)航法(N)
陸上とその周辺を航行する航空機は、陸上に設置されたVOR/DME等からの電波により自機の位置を確認して航行しているが、VOR/DME等の電波が届かない洋上では機上の慣性航法システムを利用している。慣性航法装置は時間とともにその誤差が蓄積するため、長時間の飛行では誤差の蓄積等が問題となる。
3)監視(S)
陸上及び周辺海域では地上に設置されたレーダーにより航空機の位置を監視して航空管制を行っているが、レーダーの覆域は半径200〜250マイル程度の範囲内である。したがって、レーダーの覆域外となる洋上では約1時間毎に行われるパイロットからの位置通報により航空機の位置を監視しているため、管制間隔の短縮が難しい。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION